9月23日は例年のように「会津鶴ヶ城薪能」が開かれた。当日、能楽堂に入ると、「鵜飼」の前シテが急病により、代役となったことを知った。「誰が引き受けたの」と聞くと、会長さんが「だって、連絡受けたの2日前よ、薪能を休止するわけに行かないし」と言う。

前シテには謡の聞かせどころ「鵜の段」があり、しかも暗記する謡が長いので大変だ。会長は挨拶、仕舞の地謡もあるので、とても装束をつける余裕はない。そこで、開始前に「前シテは代役のため装束とお面は付けない袴能形式で演ずる」とアナウンスされた。

今年は戊申戦争から150年で、他県からの観光客も行事に参加する人も大勢集まる。その中で、代役を演じた会長さんの責任感、心意気、見事な謡、演技には、会員一同はもちろん、観客もまた「さすが―」の感想だった。ある方の感想に「前シテが老人男性であることを忘れさせてくれる演技力であった」とある。