清水寺縁起と坂上田村麻呂


 
能「田村」は、清水寺創建の縁起物語と坂上田村麻呂の蝦夷征伐を描いた作品。

観音の仏力によって敵を討つ武将の勇猛さがメインで、明るい雰囲気に満ちた曲である。

屋島(八島)箙と共に、三大修羅とされ、祝言の能としても演じられてきました。

 坂上田村麻呂は、奈良時代末期に活躍し平安時代以降、武人の鏡として尊敬を集め、多くの伝説を生んだ。

清水寺の創建もその一つといえる。 今昔物語集巻十一や扶桑略記によると清水寺は、宝亀十一年坂上田村麻呂が

創建したとされている。

 田村麻呂は妻の病気の薬になるという鹿の血を求めて、音羽山に入り修行中の僧・延鎮に出会い、殺生をいましめられ、

それを機に田村麻呂は仏に帰依してこの寺を創建した。


 延鎮は、もと大和国子島寺の僧であったが、夢のお告げに従って音羽山に入り、そこで何百年も修行している行叡居士

と出会う。居士は後を延鎮に託して去り、延鎮は行叡居士の残していった霊木に観音の像を彫りこんで祀った。

これが清水寺の由来とされている。 能では、清水寺の創建を大同二年、延鎮を「賢心」としているがあらすじにおいては、

今昔物語集などの記載とおおむね一致している。                    (文責 折笠 成美)