平成21年 行事の記録 

 秋季演能会  2009年11月1日(日)  於、会津能楽堂 ,入場無料

 能「土蜘(宝生流)」観世流では土蜘蛛 

   

音楽(お調べ)のあと、地謡、囃子方、後見が舞台に入り、、頼光とツレも入る。そこへ笛の合図で小蝶が橋掛かりを進んでくる。いよいよ能が展開する。 源頼光は近頃病がちになっていた。肩にかけた布は床に臥せっていることを表す。一畳台は寝所・住居を表わす。

   

頼光の侍女小蝶は朝廷の典薬頭(薬局長官)が調剤した薬を持って頼光の御所に戻り頼光に面会する。観客の撮影 小蝶は「病は苦しいものだが、治療により恢復するものだ。」と頼光を力づける。頼光の謡が聞かせどころだ。観客の撮影

   

小蝶の退場と入れ違いに、夜中、伏せっている頼光の枕元に一人の僧が現れ、一の松のところで蜘蛛を暗示する。 僧は土蜘に変化(へんげ)し千筋の蜘の糸を吐き出し頼光を苦しめる。

   

頼光は枕元の「膝丸」(護身用の太刀)を抜き放し、土蜘に斬りつける。ここから、二人の所作は急展開の活劇だ。 しかし、最初の太刀をよけ、蜘蛛は頼光の寝所を占領する。この写真と次の写真は観客の方より提供を受けたもので色合いが違う。瞬間を見事に捕らえている。感謝、感謝。

   

寝所から逃げるところを何度も斬りつけ、確かな手応えがあった。土蜘は頼光の攻撃からこらえきれず糸を吐き、姿をくらます。前シテの舞台に立っているのは短い時間だが、見せ場の2発の蜘蛛の糸も見事に決って、拍手が出た。 異常を聞きつけ、ワキが駆けつける。頼光は事の次第を話し、土蜘を追い払ったのは膝丸の手柄だと言う。独武者は点々と落ちている血を辿り土蜘を退治したいと申し出る。

 

中入りの後、ワキの服装に注目。こちらは戦姿 ワキは他の武者を引連れ、血を辿って大きな塚の前にたどり着く

   

武者達が塚を崩すと、塚の中から火焔や水が噴き出される。それにもめげず、武者達が塚を崩していくと、鬼神(土蜘の精霊)が出てくる。 「御代に災いをなすために頼光に近づいたがかえって命の瀬戸際を迎えてしまった。」と武者達に襲いかかる。武者達は「神国王地」の力を頼み戦う。所作をあわせるのに苦労。
 

   

この曲では激しい戦いの中、鬼神が大鼓・小鼓・太鼓・笛のみで演奏される「舞働(まいばたらき)」を舞う。見所の一つである。この写真は観客が横より撮影。感謝 激しい戦いの後、鬼神は首を切り落され、武者達は喜び勇んで都に帰る。この写真も左と同じ観客がワキ正面から撮っている。
    

 
蜘蛛の攻撃に勝って、喜び勇んで帰路に向かう。この写真も観客が撮影。  塚の作り物に蜘蛛の糸を貼り付ける作業、午前中の行う。

 舞囃子(3番)  仕舞3曲は写真不掲載

   

鶴亀(宝生流)地謡、囃子方も会員、おなじみの曲だがさて見所は?  玉葛(宝生流)の一コマ、囃子も頑張っています。

  

猩々(観世流)ー新入会員による木の香も新しいひのき舞台での舞

    素謡(6団体のうち2団体のみ掲載)

 

           三山(宝生流)           忠信(宝生流)

能「土蜘」

  能『土蜘』あらすじ解説。五番目物・鬼畜物。所(都の源頼光の屋敷、葛城山)。季節不明。


 武人として有名な源頼光は近頃病がちになっていた。頼光の侍女小蝶は朝廷の典薬頭(てんにゃくのかみ・薬局長官)が調剤した薬を持って頼光の御所に戻り頼光に面会する。頼光は小蝶を前に「このところ病気のため気力が無くなり、もはや死期を待つばかりだ。」と思いを述べる。小蝶は「病は苦しいものだが、治療により恢復するものだ。」と力づける。とある夜中、伏せっている頼光の枕元に一人の僧が現れ頼光に襲いかかる。僧は土蜘に変化(へんげ)し千筋の蜘の糸を吐き出し頼光を苦しめる。頼光は枕元の「膝丸」(ひざまる・護身用の太刀)を抜き放し、土蜘に斬りつける。土蜘が逃げようとするところを何度も斬り伏せる。確かな手応えがあった。土蜘はこらえきれずに姿をくらます。そこに異常を聞きつけ、独武者(ひとりむしゃ)が駆けつける。頼光は事の次第を話し、土蜘を追い払ったのは膝丸の手柄だと言い、膝丸を尊んで「蜘切(くもきり)」と名付ける。独武者は点々と落ちている血を辿り土蜘を退治したいと申し出る。頼光は独武者の勇気を褒め土蜘退治を許す。
 独武者は他の武者を引連れ、血を辿って大きな塚の前にたどり着く。武者達が勇ましい声をあげながら塚を崩し石を取り除けていると、塚の中から火焔が襲いかかり、また水が噴き出される。それにもめげず、武者達が塚を崩していくと、岩の間から鬼神(土蜘の精霊)が姿を現し、「御代に災いをなすために頼光に近づいたがかえって命の瀬戸際を迎えてしまった。」と武者達に襲いかかる。武者達は「神国王地」の力を頼み戦う。激しい戦いの後鬼神は首を切り落され、武者達は喜び勇んで都に帰る。
 この曲では激しい戦いの中、鬼神が大鼓・小鼓・太鼓・笛のみで演奏される「舞働(まいばたらき)」を舞う。見所の一つである。

●Tutigumo( spider in the soil)

Raikou, a famous samurai, have been the sickness lately. His maid Kotyou returns to him with the medicine by which Tenyakunokami (secretary in the drugstore) prepared it. He grieves "I haven't much pep left for anything due to sickness. I am already waiting for the death." She encourages him "The sickness is painful, but recovers by the medical treatment." A monk shows up in the bedside of sleeping Raikou on a certain midnight. The monk transforms to the apparition of Tutigumo, and vomits the strings of spider's web. He cuts at the apparition with the sword for self-defense.
Raikou stabs at Tutigumo who tries to run away many times. Tutigumo can not endure his attacking, and disappears at last. Hitorimusya who heard of the accident runs there. Raikou explains the situation. He says "I could drive away Tutigumo by an exploit of this celebrated sword." And he says that the sword hereafter will be named Kumokiri (It means to cut a spider). Hitorimusya offers him the conquest of Tutigumo by tracing the blood that has dropped here and there.
       (interval)
 Hitorimusya and two attendants trace the blood, and at last reach in front of a big tomb.
They begin to destroy the tomb and remove the stone. The flame and spouted water from among the tomb attacks the warriors. The ogre, the apparition of a spider, appears between the rocks. The ogre attacks the warriors and says "I approached this world to do harm Raikou, but I am facing the crisis of the life on the contrary." The ogre is beheaded after violent fights, and the warriors return to the capital with great glee.
A viewpoint in this Noh is Maibataraki, a violent fight dance between the warriors and the ogre.

 第23回会津鶴ヶ城薪能  9月23日(祝) 会津能楽堂 17:30開演  入場無料

  薪能次第

    挨拶(山田和彦会長)・祝辞(菅家市郎市長)→仕舞(4番)→火入之儀→能八島(半能)

PM4;40の開門直後の見所(丸太とザラ板)の様子。開演ころにはおよそ500名の観客であった。 このころ、舞台裏では装束方の活躍でシテは表をつける寸前の様子。久々の若手のシテである。

  仕舞4番

観世流、仕舞「難波」 観世流、仕舞「天鼓」

宝生流、仕舞「鶴亀」 宝生流、仕舞「網の段」

火入之儀

篝火台は左右に1対設置、市教育長、星県憲隆氏、白装束は介添役           橋掛かり前の点火状態

 ●半能 「八島」  

能は囃子方の幕内での「お調べ」ではじまる。囃子方や地謡が舞台に入って演奏し、鋭い笛の合図で、役者が舞台に入る。 都から西国行脚の途上屋島にやって来た僧(ワキ)とワキヅレが次第の囃子で舞台に入り、「月も南の海原やー」と謡う。そしてワキはワキ座に、ワキヅレも地謡の前に座る。

前半が省略され、後半はワキの待謡から始まります。その夜、僧の夢にりりしい甲冑姿の義経が現れる。 地謡方(8名)とワキ、ワキヅレの緊張の雰囲気が伝わる

後見役が椅子をもってきてシテを座らせる(海中の馬上姿、弓流しに入る所作) 義経は弓を拾う無謀さを家来に言われるが、「弓を敵に取られ嘲笑されるより、命に代えても弓をとる」と答え家来を感動させたといわれる。地謡に合わせて、僅かな動きで、「弓流し」を表現する。見所の一つ。

さらに死後堕ちた修羅道の絶え間ない争いの有様(カケリ)演じます。カケリは修羅道の苦しみや物狂い、不安などを表す所作のことで、一般的には精神的な興奮状態、心の動揺や苦痛を表現するものです。   やがて夜明けとともに姿を消します。

解説・あらすじ、story    

 都から西国行脚の途上屋島にやって来た僧(ワキ)とワキヅレが次第の囃子で舞台に入り、「月も南の海原やー」と謡う。そしてワキはワキ座に、ワキヅレも地謡の前に座る。

今回は上演時間の関係で前半の一部を演じてのちに後半に移行する半能形式で演じます。次の小文字の内容は省略されます。
前シテの年老いた漁師が舞台に現れます。僧は漁翁に塩屋を貸してくれるように頼みますが、漁翁は、塩屋は粗末だからといって断ります。しかし、その後、漁翁は僧が都の人だと聞いて懐かしがり、塩屋に招き入れます。漁翁は僧の求めに応じて、屋島での源平合戦について景清(かげきよ)と三保谷(みおのや)の戦いぶりなどを詳しく語って聞かせます。地謡は佐藤継信が義経に代わって矢を取って倒れ、首を取ろうとした能登守の家来菊王丸は忠信の矢に倒されたなどを説明します。
僧は、源平の戦に詳しい漁師を不審に思い、彼の名を聞きます。すると、漁翁は夜の明け方、修羅の時に名を明かそうといって、義経の亡霊であることをほのめかしつつ姿を消します。

 
後半はワキの待謡から始まります。その夜、僧の夢にりりしい甲冑姿の義経が現れ、今も屋島の地に執心が残っているのだと語り、屋島の戦いでの「弓流し」の有様を再現し、さらに死後堕ちた修羅道の絶え間ない争いの有様を演じ、やがて夜明けとともに姿を消します。その後には浦風の音だけが残るばかりです。

見所は義経の弓流しの「居グセ」と修羅道での激しい戦いの有様を表現する「カケリ」という舞の部分でしょう。居グセは地謡いに合わせわずかな動きで表現する。義経は弓を拾う無謀さを家来に言われるが、「弓を敵に取られ嘲笑されるより、命に代えても弓をとる」と答え家来を感動させたといわれる。
カケリは修羅道の苦しみや物狂い、不安などを表す所作のことです。精神的な興奮状態、心の動揺や苦痛を表現するものです。(文責 鈴木)
 

 Noh Yashima (Yashima Bay)

The priests Waki and Wakitsure who came from the capital to Yashima on the way to the western country pilgrimage enter to the stage with shidai music.
And they sing of the moon and the ocean.And then they sit down at right side Wakiza of the stage.
  Yashima Bay is in Sanuki Province ( the present Takamatsu City, Kagawa Prefecture, Shikoku) and is the place of a famous Genpei battle in which the Minamoto, led by Yoshitsune, routed the Taira.

The following content of the first half of Noh is omitted because of the presentation time and moves to the latter half part.
A fisherman (main actor of first half) appears.
The priest asks the fisherman for a night's lodging in the salt-house and is at first refused because the house is so poor. But the fisherman relents when the priest asks about the battle fought here.
The fisherman tells to the priests in detail about the struggle between Kagekiyo of the Taira and Mionoya of the Minamoto. The chorus describes how Sato Tsuginobu took an arrow in place of Yoshitsune and the Lord of Noto was in turn struck down. The priest doubts a well informed fisherman about the Genji and Heike's war, and hears his name. Then the old man of fishing says that he reveals his name when he is a Shura at the dawn.
And he disappears hinting that he is Yoshitsune's revenant .Urging the priests not to awake from their dream and he exits. (Interval)

The latter half starts from waiting songs of waki.
Yoshitsune of a dignified armor appearance shows up to priest's dream on that night. Yoshitune talks of
his tenacious and devotional mind about Yashima . The state in which the bow in the fight of Yashima is dropped to the sea is reappeared.
Yoshitsune performs a vigorous Kakeri anguish dance, and then mimes the battle of Asura hell. And, he disappears before long at daybreak.
Afterwards, only the sound of the sea breeze just remains.
The viewpoint of this Noh might be a part of Iguse
(little movement according to the colus) that express Yoshitsune's Yuminagashi and Kakeri anguish dance . (by ksk)

 春季演能会 能「藤」 あらすじ解説story  

                                  

都の僧ワキとワキヅレが舞台に上がり、舞台に藤の花がないが、見事な藤花を愛でる。古歌「常磐なる松の名たてにあやなくもかかれる藤の咲きて散るやと(松は常盤木なのに、それに懸かった藤は咲けば散ってしまう)」を口ずさみます。藤の作り物を舞台に出す演出もある。

           
そこにどこからともなく美しい女(シテ)が現れ、この地は藤の名所であるが、古歌は古歌でもどうして「多枯の浦や汀の藤の咲きしより浪の花さえ色に出でつつ(藤の花が水に映って波も紫色に見える)」を詠じないのかと、うらめし顔に言葉をかけます。

       

僧は女がどうして古歌にくわしいのかと尋ねます。女は自分は藤の花の精であると素性を明かしつつ姿を消します。

      

  
                今回の能では女性による地謡です。

    

頭に藤の花を付けた後シテがあわられます。 後シテの登場は笛の鋭い響きで出てきます。
      

僧が仮寝をしていると、花の精が再び現れ、自分は花の精でありながら尊い佛の教えによって悟りを聞き、花の菩薩となって現れたのだと告げます
      
そして仏法の尊い摂理を説きながら、多枯の浦の美しい景色を唄に織り込みつつ美しい舞(序之舞)を舞い、夜が明ける頃、朝霞に紛れて姿を消して行きます。

      後シテ 五十嵐久子   前シテ山垣美枝子   ワキ 坂内庄一    ワキヅレ 荒川 勝                                       大鼓  船木真一  太 一条正夫 小鼓 折笠成美  笛 山田和彦                                           地謡   広谷元子 志波幸世 古田豊子 大野千佳子 (後列)浜崎幸子 佐藤ヨシカ 玉川おくに 石田セツ子                           

  舞囃子       

   養 老  シテ 渡部静子                          芦 刈  シテ 船木真一

                                                                     

    草子洗  シテ 遠藤ヒロ子

    

                   

       
 羽衣の連調(太鼓)は出し物としては珍しい番組で、よく調子が合っているのは写真からご想像ください。